2017年2月4日土曜日

音楽教室から著作権使用料徴収?

一昨日(2017/2/2)のニュースで,「音楽教室から著作権料徴収へ JASRAC方針、反発も」(www.asahi.com)というのがあった。
自分自身,過去に音楽教室に通い,今,子どもを通わせている。また,法律職ではないが,仕事柄著作権についてはある程度理解しているつもりなので,ちょっと書いてみようと思う。

今回問題になっているのは?

ヤマハや河合楽器などの音楽教室で使用されている楽曲について,著作権法第22条に基づく「演奏権」の使用料をJASRACが請求しようとしている。(と,報道されている)

演奏権とは

著作権法第22条によると,
第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
 となっている。要は,楽曲を演奏会などで公衆に聞かせるためには,著作権者の許諾が必要だと。で,音楽に関してはJASRACが著作権管理団体になっている作品が多いため,JASRACの許諾(JASRACへの支払)が必要になることが多い。
ただし,他の著作権と同様に,著作権の制限もかかっている。例えば,第30条の「私的使用のための複製」,第38条の「営利を目的としない上演等」があるため,

  • 自分で演奏して楽しむ
  • 家庭内,友人などの前で演奏する
  • 無料の演奏会
などであれば,特に許可なく演奏することができる。
まあ,家で演奏するときに著作権者の許可が必要!なんてことになったらどう考えてもおかしい。

音楽教室で演奏権?

で,今回JASRACは,「音楽教室での演奏(練習)は,不特定多数の生徒が聞くことになるので,演奏権が及ぶ」と言っているようだ。ただ,あくまでも報道を介しての情報なので,細かいニュアンスはよくわからない。
まず,音楽教室の場合,先生(講師)と生徒とがいるが,今回JASRACが問題にしているのが
  • 先生が演奏すること
  • 生徒が演奏すること
  • その両方
なのかがよくわからない。おそらくは,「両方」なのではないかと思うが。。。。

著作物って,教育目的なら自由に使えるのでは?

確かに,著作権法では第35条において,「学校その他の教育機関における複製等」という制限がある。ただし,この対象となるのは,
学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において
ということで,塾や音楽教室など,営利を目的とした教育機関は対象外になっている。なので,今回は適用されない。朝日新聞の記事によると,ヤマハ音楽振興会の理事さんが,
「教育目的での利用であり、カラオケなどと同じ扱いはおかしい」
と言っているようだが,この言い分はおかしい。(ただし,あくまでも新聞の記事を通してなので,発言が正しく伝えられているかどうかは不明だが)
なので,当然ながらテキスト(楽譜)に収録されている楽曲については,著作権処理されている。テキストの奥付を見ると,ものによってはJASRACの管理番号が記載されている。(すなわち,楽譜に掲載するための著作権許諾を受けている)

また,学校などでも必ずしも自由に使えるわけではないが,今回はこの件に関しては深入りしない。

JASRACの管理楽曲がどのくらい使われているの?

まず,大前提としてすべての音楽がJASRACで管理されているわけではない。あくまでも楽曲の著作権者(作曲家など)がJASRACに委託して,はじめてJASRACの管理楽曲となる。また,当然ながらクラシックや民謡など,著作権が切れた音楽はJASRACの管理下にない。

うちの子どもが通っているのはヤマハの音楽教室で,ジュニア総合コース(小学校3年生)と幼児科(年長)に在籍している。
まず,幼児科(年中~年長の2年間が基本)のテキストを見る限り,おそらく1曲だけJASRACの管理楽曲がある。ほとんどは,クラシックや民謡とオリジナル曲なのだが,オリジナル曲の中にシンガーソングライターの谷山浩子さんが作詞作曲されたものが入っている。で,確かJASRACのルールでは,JASRACに委託しているアーティストの作品は,すべてJASRACの管理となるはずなので,この曲だけJASRACに委託しないとかはできなかったはず。
小学生のジュニア総合コース3年目では,いくつかJASRAC管理楽曲が入っている。特に,うちはエレクトーンなので,映画の曲など,比較的新しい曲の割合が高い。あと,オリジナル曲でもヤマハ所属のエレクトーンプレーヤーなどが作曲した曲で,JASRAC管理のものもある。

ネット上では,「オリジナル曲を使えばいいじゃない」みたいな声もあがっているけど,オリジナルとはいえ,プロの作曲家が作るわけで,その人がJASRACに委託している場合はJASRAC管理となってしまう。また,ほとんどの作曲家はJASRACに委託している。幼児科くらいの短いフレーズならともかく,ある程度の年齢になって弾く曲になると,適当に用意したものでは難しい。また,クラシックや民謡ばかりでは飽きてしまうので,非JASRAC管理の曲ばかりというのは無理がある。

音楽教室での演奏は「演奏権」の対象になるのか?

これに関しては,最終的には裁判所のお仕事だと思うので,私が判断することはできない。ただ,個人的な考えとしては,ヤマハ音楽振興会の顧問弁護士の発言の
「演奏権が及ぶのは公衆に聞かせるための演奏であり、練習や指導のための演奏には及ばない。文化の発展という著作権法の目的にも適合しない」
というのに同意する。すでに,テキスト(楽譜)の段階で出版物としての著作権処理はされているので,練習や指導のための演奏には演奏権は及ばないと考えるのが自然だろう。

また,記事中で,JASRACが徴収する金額案として,「年間受講料の2.5%」と言っているようだが,まさに「寝言は寝て言え」っていう感じだ。 2.5%って,どれだけ持っていくつもりだ。



(おまけ)JASRACの存在は悪なのか?

これに対しては,JASRACのような著作権管理団体の存在は非常に大切だと思う。それこそ,著作物の利用にあたって,管理団体がなかったら,個々の著作権者にいちいち許諾を求め,支払をしないといけない。非常に手間がかかる。だが,無茶な徴収はだめだ。